「越前鳥の子紙」【重要無形文化財(工芸技術)】に

保持団体 越前生漉鳥の子紙保存会
国の文化審議会が2017年(平成29年)7月21日「越前鳥の子紙」を重要無形文化財に指定するよう文科大臣に答申し、同年10月2日に指定され、「越前鳥の子紙保存会」が保持団体として認定されました。
福井県内での重要無形文化財は、同じく越前和紙の「越前奉書」に次いで2件目。


指定基準
芸術上価値が高く、又は工芸史上重要な位置を占め、かつ、地方的特色が顕著なもの


保持団体認定基準
工芸技術の性格上個人的特色が薄く、かつ、当該工芸技術を保持する者が多数いる場合において、これらの者が主たる構成員となっている団体

重要無形文化財の概要
「越前鳥の子紙」は、福井県越前市に伝承されている手漉きの雁皮紙の製作技術です。
雁皮紙は、ジンチョウゲ科の雁皮を原料とする紙で、奈良時代から漉かれてきた我が国の主要な手漉き和紙の一つであります。かすかに黄色味を帯びた色合い、滑らかで光沢のある紙肌、虫害に強く耐久性に富むという特色があります。
「鳥の子」とは、中世から用いられている雁皮紙の呼称の一つであり、『下学集(かがくしゅう)』(文安元(1444)年)によると、紙の色が卵殻の色に似ていることに由来するということです。
越前では、室町時代には既に料紙用の鳥の子が漉かれ、18世紀になると大判の間似合紙(まにあいし)(幅三尺強)、明治時代以降は襖紙としても漉かれ、我が国における主要な産地の一つとして現在に至っています。
「越前鳥の子紙」は、雁皮の白皮を原料に、トロロアオイの根やノリウツギの樹皮を「ねり」として、竹簀又は紗張りの竹簀を用いた流し漉きの技法で漉き、銀杏の干し板などに張って天日又は室で乾燥させます。
繊維の短い雁皮を均一な紙に漉きあげるには高度な技術が必要とされるが、越前では厚手の襖紙から極薄の比較的小さな紙まで、多様な鳥の子を漉く技術が伝承されています。

指定の要件
一、原料は、雁皮のみであること。
二、伝統的な製法と製紙用具によること。
  1、白皮作業を行い、煮熟(しゃじゅく)には草木灰又はソーダ灰を使用すること。
  2、薬品漂白を行わず、填料(てんりょう)を紙料に添加しないこと。
  3、叩解(こうかい)は、手打ち又はこれに準じた方法で行うこと。
  4、抄造は、「ねり」にトロロアオイ又はノリウツギを用い、竹簀又は紗張りの竹簀を用いた流し漉きであること。
  5、板干し又は鉄板による乾燥であること。
三、伝統的な越前鳥の子紙の色沢(しきたく)、地合(じあい)等の特質を保持すること。


越前生漉鳥の子保存会の活動

歴史ある雁皮紙の調査研究

過去に漉かれた雁皮紙を
東京の五島美術館や市が保存する江戸時代に漉かれた紙の原料の配合具合等を調査研究もしています。


雁皮の採取

山の中へ分入って
福井県敦賀半島の山中や、和紙の里の山中へ雁皮の皮をゲットしに行きました。
雁皮の皮は現場ですぐに剥ぎ取ってしまいます。このタイミングが一番楽に作業ができ、持ち帰るのにも軽くて済みます。


越前生漉鳥の子紙保存会

鳥の子紙(生漉雁皮紙)の抄紙技術保存団体の設立
ベテラン職人から若手職人への技術継承に加え、原料の雁皮の栽培や紙漉き道具の製造技術、そして江戸時代に漉かれた和紙の調査研究を行い、国の重要無形文化財(重文)指定を目指します。